目詰まりしない濃縮・脱水方式、開発軸は「スクリュープレス」
濾布式では機構的に避けることの出来ない「目詰まり」を起こさない製品の開発には、
濾布を使わない方式 への転換が基本方針となりました。
そして当時一般的に採用されていた5つの方式、
「真空」「遠心」「スクリュープレス」「フィルタープレス」「ベルトプレス」のうち、濾布を用いず動力の最も少ない「スクリュープレス」を基本方針にすることが決定したのです。
目詰まりを掻き出すくし刃
「目詰まり」を起こさないためには――。
寝ても覚めても、この事ばかりを考えていた創業者と
開発グループのメンバー。
1988年、彼らは1つの考えにたどり着きます。
目詰まりしてしまうなら
「何か」で掻き出してしまえば良い。
その考えは、スクリューをツメのようなパーツの積層で形成し、
スクリュー羽根のエッジで濾過体の目詰まりを掻き出すというもの。
スクリューとかみ合うように設計された濾過体と組み合わせることで、
「髪にくしを通す」ように目詰まりを清掃する社内通称「くし刃」方式。
この仕組みを実装した開発機は、
自社が管理を請け負う集合浄化槽に早速持ち込まれ、
実証テストを開始。
テストの結果は上々で、より良い工夫と指摘を求め、
その過程を様々な企業・研究所などに公開しました。
その甲斐あって開発機公開の段階から、この「くし刃」方式を
高く評価していた企業の販売協力を得て、1990年秋に初納入を実現したのです。
初納入を皮切りに、本格販売を開始した新型機は
『らせん状』や『渦巻き』を意味する"VOLUTE™「ヴァルート™」"
という製品名を冠し、「ヴァルート™濃縮機・脱水機」として
1991年4月に正式に販売を開始しました。
重なる不具合、「くし刃が折れる?」
上々の滑り出しに、開発メンバーをはじめ社員全員が、充実感に包まれていました。
この調子でさらなる改良を加えながら、
ヴァルート™脱水機のシェアを拡大できれば、
日本の汚泥処理が劇的に変わる!
―そんな中、社内に1本の電話が鳴り響きました。
「・・・くし刃が折れた!?」
不具合を伝える第一報でした。その後も同様の問い合わせが立て続けに入ります。
どういうことだ? 何が起きている?
開発メンバー達はすぐさま現地へ飛び、不具合の検証にあたりました。
その結果、実際にフル稼働で機械を動かし続けると、
わずか数百時間で「くし刃」が折れてしまうことが判明したのです。
不具合を解決するため、様々な方法が検討されました。
- くし刃の素材を変えて強度を上げてみては?
- くし刃をテフロン加工して摩擦を減らせないか?
- くし刃と濾過体の組立精度、重ね方を変えてみては?
・・・ありとあらゆる解決策の検討と検証テストが行われた結果、
絶望的な状況に開発メンバーはたどり着きます。
積層型の構造そのものが原因だ。
素材や表面加工、組み立て精度が、破損の理由ではなかったのです。
いくら精度を上げて組み立てても、この構造では
汚泥を掻き出すくし刃の部分に負荷が集中的にかかり、くし刃自体が折れてしまうのです。